6/5(日)の百色百型の実演
藍田染工で江戸小紋師をしている麻薙です。
先週末は実演のお手伝いに絹の里に行きました。
前回、初めてブログをちゃんと書こうと思いましたが、お話の内容を文章に起こせるほど覚えていなかったことに絶望したので、今回はちゃんとメモを取りながら聴きました。
10時過ぎに会場につき、しばらくするとお客様もお見えになり始まりました。
愛郎さんが藍田正雄親方に弟子入りして23年、作品作りにおいて大切だと気づいたことは段取り、道具、体調などを整えて臨むということ。
まずは、道具の名前と用途などを簡単に説明しました。
藍田染工の長板はもみの木7m(絹の里の板は銀杏の木で4mほどのもの)、毎年板洗いをして、「もちこ」をしきのりするところから始まります。
板にまんべんなく平らにしきのりできるかが大切なことです。
やってみると意外と難しい、やり方を親方の後ろから黙ってみる。
なかなか上手くできなかったそう。
しきのりだけでなく、技術を必要とすることは、大切なポイントなどを伝えていくのが大変だと言っていました。
確かに‘‘感覚的なところは最後は教えられないから大変‘‘とよく取材などでも言っているのを覚えています。
さらさらとした板に霧をふくと、しきのりのねばりが戻るので「地張り」をします。
‘‘布目を通すこと縦のものは縦にはる、横のものは横にはる‘‘付ける型の特徴によって生地のはり方も変わります。
耳に紙テープをはります。理由は‘‘型紙が生地の段差で擦れて痛むから‘‘
ここで「小本(こほん)」の説明です。
小本とは…型紙を着尺幅に彫り起こす前の元になる型紙です。
サイズは5cm~8cmくらい。四方がつながるようにできています。
今回の実演は、道具彫りと縞彫りを。
‘‘私は染めるだけ‘‘
型を彫る彫師と染める小紋師は完全分業です。
縞の型紙は彫った後は「糸入れ」の工程があります。
彫刻したものを奥さんに渡して糸入れしてもらう。
春号の絹糸を渡して、2枚の型紙の間に絹糸を挟み込み縞がズレないように柿渋で貼り合わせます。
余分な柿渋を吹き飛ばすのに、女性の息の加減がちょうどよかったそうです。
これをしないと縞の型紙は使えません。
最近は、型地紙のいいものがなく、
また糸入れができる方もいないため縞の型紙は大変貴重なものになってしまいました。
藍田染工では市販の糊は使わず、糠とその他の粉を調合して糊を作っています。
調合して5時間蒸して、使いやすい糊を作らなければ一反平ら(たいら)につけることはできないからです。
一型じゃないので、一回でもずれれば着物にはならないからです。
最初修行するときは駒ベラを三年くらいやり、縞は6年目から、仕事があっても縞は触らせてもらえない。
縞の型紙は糸が入っているため、うかつに持つと糸が切れてしまいます。
糸が切れた型紙はもう使えません。
糊は自分の固さを見つけながら、とにかく慣れるまで、駒ベラの仕事をし、ようやく5年、6年目から縞の型紙を扱えるようになります。
ホントに合ってるかなって問いかけながら、最初の四、五型くらいは恐々と始めます。
弟子入りしたときは糊を少なくもったり大きくもったり
『バカの大糊、間抜けな小糊』といわれて、、、
”そういう細かい感覚のところまで気を遣いなさいって言われてたんでしょうね”と
前の糊と高さ幅全て同じにしとかないと段差ができるので、型紙が乾いてくると何度こすっても柄がおりない。
型の湿り具合と、糊の湿り具合をいつも同じ状態にできるようにみて、それを一反13メートルやります。
この後、毛万筋の型紙を使って『引き杢』の実演もしてくださいました。
藍田正雄親方が大切にしていた『引き杢』の技法。
同じやり方でも、人によって好む杢が違うので様々な表情を見せます。
愛郎さんには愛郎さんの引き杢があり、田中さんには田中さんの、、、
江戸小紋の文様の懐の深さが「お前はどういうものを作るんだい?」と語りかけてくるようです。
実演をご覧くださった方々にも、江戸小紋の魅力が伝わってるといいな。